『鋼の錬金術師』 荒川弘 原作 (★★★★★)

ブラボー!
数年前に偶然テレビで見かけて、(第7話だったか)1話見ただけでこれはおもしろいと思わされたアニメ。その後、アニメは見ていなかったが、原作の漫画は単行本として出版されているところまで全て読んだ。指折りの良作の一つ。
何をきっかけにしたのか忘れたがアニメも全部見ることにした。原作が終わっていないのでアニメはどういう終わらせ方にしたのか気になっていたし。
私の場合は、曲がりなりにも物理学を嗜む者であるが故に、より一層この作品の世界設定や物語に引き込まれるのだろうと思う。この作品で述べられていることはまさに我々の世界で物理学者を始めとした科学者達が探求していることであり、知性と呼ばれるものを得た人類の究極的な命題なのだ。
「世界の真実とは?」
「人間とは何か?」
科学者のみならず、その命題の答えを追い求めることは人類の本能と呼んでよいと言える。だからこそ、エドとアル、その他の登場人物が「世界の真実」を求めて旅をし、苦悩する姿を描いたこの作品が多くの人を惹きつけ、絶大な人気を誇っている所以だろう。
また、この世界での錬金術における「等価交換の原則」をキーワードに人間の生き方というものも一つのテーマになっていて、人としての主要かつ根源的な哲学を全て放り込んでありながら、崩壊することなく物語を構築しているのは素晴らしい。
特に最後の数話は衝撃と感嘆の連続だった。序盤から「まあアニメだからね」と割り切っていた部分にも最後にはきちんと言及されていて、しかもそういう結論に持って行くとは本当に衝撃的で感動した。
原作がまだ続いているのでアニメでは当然ながら後半は独自の展開がなされるが、とても完成度の高いものであると思う。
各回の冒頭に挿入される以下のメッセージは、それだけで作品の世界へと引き込むに十分な力を持っている。

「人は何かの犠牲なしに何も得ることはできない」
「何かを得るためには同等の代価が必要になる」
「それが、錬金術における等価交換の原則だ」
「その頃ぼくらは、それが世界の真実だと信じていた…」